取締役会の招集通知
今回は「取締役会の招集通知」に関する話題です。
会社法では、取締役会を招集するには、会日から一週間前に各取締役に対して招集通知を発しなければならない、とされています(会社法368条1項)。
なお、「一週間」という期間は定款で短縮することができるため、多くの会社は定款でその期間を短縮しています。
「通知」の方法・手段については会社法に定めはなく、「書面」でなければならないとはされていません。そのため、「口頭」による招集通知も可能とされています。
また、「電子メール」を利用して招集通知を行っている会社も多いと思います。
電子メールによる取締役会の招集通知
電子メールによる取締役会の招集通知ですが、少し気を付ける点があります。
電子メールによる招集通知につき、招集通知がなされていないと判断された裁判例があります(東京地裁平成29年4月13日判決 金融・商事判例1535号56頁)。
この裁判例の事案では、会社が割り当てたメールアドレスが取締役に付与されており、そのアドレス宛に取締役会の招集通知がなされました。
しかし、問題となった取締役は、自らパソコンを使用することはなく、そのパソコンも会社の秘書室で管理されており、勤務当時にもこれまで当該アドレスに電子メールが送信されたことはなく、秘書室でもメールの受信状況を確認していなかった、という事情が存在する事案でした。
さらに、その招集通知メールというのも、午前9時30分開催予定の取締役会につき、その前日の深夜(午後11時23分)に送信されたという事案でもありました。
これらの事情から、裁判では、当該取締役に対し、招集通知がなされたとはいえない、と判断されています。
このように、この裁判例は、かなり特殊な事例における判断だといえます。
基本的には、会社が業務のために割り当てたアドレスなど、取締役が日常的に業務等で使用するメールアドレスに招集通知を送信すれば、会社法上も取締役会の招集通知がなされたものと考えて差し支えないでしょう。あくまでも、例外的に、普段からパソコンや電子メールを利用されない取締役については、電子メール以外の方法を選択すべき、ということですね。
以上、電子メールによる取締役会の招集通知についてでした。
ちなみに、上記裁判例は、「招集通知はなされていない」との判断をしていますが、結論として、「取締役会決議は有効」と判断しています。招集手続に法令違反はあったものの、当該取締役が、仮に取締役会に出席していたとしても、決議の結果に影響がなかったと認められる特段の事情があったと判断されています。この点でも、なかなか興味深く、勉強になる事例だと思います。